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登山道整備と道の在り方

はじめに

  私は、奈良県・曽爾(そに)村に拠点を置く「大和高原トレッキング&ネイチャーガイド協会」というガイド協会に所属しています。協会では、村から委託を受けて、登山道の整備を年に数回行っています。

 曽爾村といえば、秋のススキの穂が美しい曽爾高原で有名です。このほか、火山噴火によってできた屏風岩公園や鎧岳といった特異な山容の山々も有名で、たくさんの方が山に登りに来られます。

曽爾高原。真ん中に見えるのは、お亀池。
曽爾高原。真ん中に見えるのは、お亀池。
柱状節理の発達した鎧岳
柱状節理の発達した鎧岳

登山者の安全登山のために、道整備は欠かせません。昨今は台風をはじめとした激しい気象条件によって倒木が発生しやすく、あっという間に道が分かりづらくなってしまうことも多々あります。

登山道整備の考え方

 登山道整備は、その時々によって、整備する内容が異なってきます。初夏~夏だと、倒木処理・草刈が多くなります。逆に秋・初春だと倒木処理などの作業は少ないので、案内標識の確認や、案内テープの張り直しなどします。
 登山者にとって、木に結びつけられたテープは道しるべとなり、安心材料となります。しかし山を利用するのは登山者だけではありません。同様に森を利用するのは、主に林業の方です。彼らは、自分の所有林の領域を示すために目印にテープやペンキをつけられることがあります。ですから、テープがある=登山道と、安易に頼りすぎないことが大切です。
 道案内のテープは多ければ多いほどよい、というわけではありません。やはり自然ではないものを付加するわけなので、最低限度に抑える必要があります。またその方法も、木に金属ワイヤーをくくりつけるような、木の成長を妨げるものは許容できません。このような考えのもと、踏み跡が複数あったり、広い尾根で迷いが発生しそうな場所、あるいは、迷いなく一本道だけれども、あまりにも距離が長くて少し不安になってくるような場所にはあえてテープをつける、という考えでテープを付加していきます。逆に同じ場所に黄色・赤・緑と何本ものテープが巻かれている場合は、一つにしぼり、あとは取り払います。不必要に多いからです。そしてテープは生木でなく、できれば数年は存在しているであろう枯れ木につけるようにしています。 
 テープは道案内の意味のほか、足元もしくは頭上注意の意味でつけることもあります。
 私たちは登山者目線で登山道整備をしていますが、同時にガイドという立場から、自然保護の観点も持ち合わせて整備を行っています。

登山道を塞いでいる倒木
登山道を塞いでいる倒木

 登山道整備では、急斜面地・危険地帯へのロープ設置、付け替えも行います。もともと役所によってロープが設置されていたものの、それを辿っていくほうが危ない、と判断した場合は古いロープを撤去し、安全な場所から降りられるように新しいロープを設置する、といったこともします。

 先日の登山道整備では、ロープのかかった木がすでに腐っており(左側)、ロープの弾力性もなくなっていることから、右のように、強い木の枝に付け替えたほうがいいねという話をしていました。このときはロープを運んでいなかったので、日を改めての対応となりそうです。


 

 そして見つけたのがこの標識の手書きのメッセージ。標識に向かって左側方向へ「右へ」と書かれておりまた、「左に行ったら危険」と書かれています。登山道は標識向かって左側にしかなく、右側は下山路の林道で、書かれている意味が全く分かりません。

 その案内によって遭難が生じるなど問題が起こったときは、登山道整備をしている私たちの責任が問われます。しかしそれは、原因がはっきりしているので対処の方法があります。ところが、このような誰が書いたか、何を思ったか分からない案内で事故が起こった場合はどうなるでしょうか。誰が責任を取ってくれるのでしょうか。遭難に至った場合、真っ先に駆り出されるは地元の消防・警察、そして村の人たちです。このような迷惑行為は本当にやめてもらいたいです。

登山道整備が必要な場合は、役場に連絡を

 登山道が分かりづらくなる原因は自然現象のみならず、林業の方が枝打ちを行った結果足元の道が判然としづらくなるということもあります。また最近では、登山アプリに残された「足跡」を頼りに歩く方も多いとみられ、明らかに間違っているルートがたくさんの人によって踏み固められ、道のようになってしまって誤って誘導されるケースもあります。それから、人の善意によってテープが不必要に多くなり、却って分かりづらくなることもあります。

 少なくとも曽爾村にある名前のついた名山は私たちが安全管理もかねて登山道整備をしていますので、もし分かりにくい場所や危険な場所があれば、役所に連絡をしていただければと思います(私に直接言ってくださっても構いません)。自己判断でロープやテープをつけたり、案内標識をつけたり書き換えたりしないで頂きたいです。
 私たちも毎日登山道をパトロールしているわけでなく、大規模な整備は年に数回しかできないので、対応が遅れたり、気づかず危険なまま放置されていることがあるかもしれません。そういう意味では、登山者の皆さんの気づきと指摘がとても大事です。緊急性が高い場合はなるべく早くに現地確認にいきますので、積極的に情報をご提供ください。

 

 ※登山道整備を行っているのか、誰が・どこが担っているのかは、地域によって異なります。