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傘をさす派?ささない派?

 今年の夏は、ガイドでも、プライベートでも、上高地を中心とした北アルプス山域を何度も行き来しました。

 そのときに気になったのは、傘をさす登山者です。

 ここ数年は温暖化の影響で、アルプスと言えども全く「避暑地」でなく暑く、むしろ太陽に近い山の上になればなるほど紫外線がきつく、帽子をかぶるだけでは日差しを十分に遮られず「危険」な状況になっている場合もあります。ですから、日傘をさしたい気持ちは十分分かります。しかしです。岳沢小屋からの下り道、あるいは槍ヶ岳のグリーンバンド付近でもそれをしますか?

 日傘・雨傘問わず、狭い登山道で傘をさすことについて、私は基本的に否定的です。何より危ない。

 言い方を選ばないで言うと、傘をさす人が、傘を差しながら歩くことによって滑ったり転んだりして怪我をするのは自業自得だと思います。そういう意味では好きにしたら良いです。ですが、狭い登山道のすれ違いで、傘をさしている人があればどうでしょうか。危ない目に遭うのは、傘をさしていないほうです。雨の時には特に雨具のフードなどをかぶっていて視野が広くないため、傘の鋭利な先が相手に/自分に向いていることに気づけない可能性があります。万一傘をさして転んだときに、その傘を他人にさしてしまう可能性もあります。あるいは、傘をよけようとしてよろけ、転・滑落する可能性もあります。せめて他人とすれ違うときくらいは閉じてほしいです。

 私がガイドするのは聞こえないお客様であることが多いので、傘をさしている登山者とのすれ違いには特に気を遣います。すれ違い登山者がいることを知らせるのに音声では伝えられず見てもらう必要があるため、聞こえる私たちに比べて反応が遅れがちです。そのあいだに傘をさした登山者が突っ込んでくれば危なくて仕方なく、そのような自己中心的な行動をする登山者には怒りしか湧いてきません。

 今夏特に困ったのが、外国人の傘差し登山者でした。先に書いた、槍ヶ岳のグリーンバンド付近で、外国人と思しき登山者が前にいました。

 外国人登山者には、「登り優先」の日本のルールが知られていないのでしょうか。まったく待つ気配なく先に降りてこようとする登山者が、日本の登山者に比べて圧倒的に多い印象があります。その上部にいる外国人登山者の一人が傘をさしていました。明らかに向こうのほうが待つスペースがあったので待ってほしかったのですが、構わず降りてくる。仕方ないので急遽立ち止まりました。聞こえないお客様が、私が立ち止まったことに気づいた時には、私たちがいる狭い登山道に傘をさした登山者が降りようとしていました。聞こえないお客様が立ち止まるときはまだ何が起きているか理解できていません。とりあえずガイドが止まったので、何かあるのだろうなぁ、くらいしか分からないのです。何かあったのだろうなぁ、で顔を上げた瞬間に目の前に傘が飛び込んできたらどうでしょうか。非常に怖いですよね。英語が通じる外国人ならまだ英語で「Wait!」でも言えるのですけど、それも通じない相手のときには強引に腕を出して相手の行動を止めるしかありません。しかし今回はそれも間に合いませんでした。

 広い道で傘をさすことに対しては何も言いません。たとえば上高地・河童橋~横尾までの道。雨具だけではやはり濡れますから、傘があれば、体の濡れも少なく、低体温症のリスクも低減してむしろ良いと思います。

 私が言いたいのは、傘を使う場所を選んでほしいということ、すれ違いの相手がいるときには、相手の安全を考慮した行動をしてほしいということです。

 傘だけの問題ではありませんが、もう少し、他の登山者の安全も考慮した行動を考えましょうね。

 

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コメント: 1
  • #1

    齊藤由利子 (水曜日, 16 10月 2024 19:41)

    同感です。傘をさして歩くなんて、とんでもないです!雨具も工夫が見られますのでそれで十分です。上高地の徳沢園まで平らな道なので傘アリでも良いのですが。これは「山渓」などに投稿したらいかがでしょうか?聞こえない読者もいます。皆さんで必要最限のルールを守って安全に楽しくすべきですね。