登山に関する事故のニュースや報告を見ていると、例えば、事故者は「登山歴20年のベテランだった」とか、「(彼は)ベテランなので、大丈夫だと思った」などの説明やコメントが書かれていることがあったりしますね。
では、山登りにおける「ベテラン」ってどういう人だと皆さんは思われますか?
「経験が長い人」・・長いってどれくらい? 「クライミングできる人」・・どうして? 「雪山に行っている人」・・なぜ?
こんなふうに突き詰めていったとき、明確な答えができるでしょうか。
例えば一言で「経験が長い」と言って、それが登山歴20年や30年だとしても、整備された登山道を気象条件の良い時にしか行っていないなら、どんなにたくさんの山を登っていたとしても、「ベテラン」とは呼べないと私は思っています。
仮に「雪山に行っている人」がベテランだとして、その雪山が、トレース(踏み跡)がしっかりとついているような、たくさんの人が登っている山で、それも条件の良いときにしか行っていないなら、やっぱりそれも「ベテラン」とは呼べないと思うのです。
山登りの経験が長いことやアルプスの山々をたくさん登っていることや、百名山登頂を達成したことなんて、「ベテラン」を保障するものでもなんでもありません。
さらにいうなら、日本に昔から「弘法も筆の誤り」「猿も木から落ちる」といった諺があるように、どんな経験者でも、どんな熟達者でも、間違えるときは間違える、失敗するときは失敗するのです。だから、単に「ベテラン」という他者の評価、評判だけで無条件に頼り切ってしまうことも、安心してしまうことも大きな間違いなのです。山においてそれは時に命取りになるからこそ、用心が必要です。
山登りで大切なのは、「どれだけ山の修羅場を経験し自力対処してきたか」であり、「どれくらい自分の頭で考え登ってきたか」であり、それがない経験は、少々厳しく言えば、どんなに長くとも何も積み重なっていないことと同義と言えます。
加えて、その人と一緒に行って無事に下山できるかどうか、その力がある人かどうかを見極めること、つまり、
ーきちんとパーティ行動ができる人か
ー何か起こったとき、パーティメンバーとしっかり話しあって考えてくれるか
ーもし何か事故が起こった時、その人は冷静に対応できるか。自分を守ってくれるか。救助を呼んでくれるか
そういったことをきちんと自分で評価することが大事だと思っています。
そんなこと言っても、もしその人とあまり一緒に山に行ったことがないなら分かりませんよね。だからこそ、いきなり、より危険性の高いアルプスに行ったり、一般道でないバリエーションルートに行ったりしません。たとえその人が「ベテラン」と言われている人であっても、まずは街の近郊の低山に、上記のようなことを考えながら何回かの山行に行ってみます。そして、「この人と一緒に行っても大丈夫」と思えたなら、次は少し難しい・厳しい山にチャレンジします。そうすると、不思議とその山行はとても刺激あるものになって、記憶に残るものになるのです。
繰り返しになりますが、山での一度の失敗は、命取りになることがあります。取り返しのつかないことになることがあります。命は一つしかありません。命があれば何度でもチャレンジできますが、なくなってしまったらそれでお終いです。
その山は、今この条件で行く必要があるのか? その人と今行く必要があるのか?
「ベテラン」という言葉に安心しない。人の評価は自分の評価と違いますから。きちんと自分の目で、自分の頭で確かめる。それが自分の命を守る唯一の方法だと思います。
私は山登りに行くときは常にこのようなことを考え、一緒に行くメンバーと行先を選んでいます。
コメントをお書きください
成瀬 (水曜日, 14 4月 2021 21:38)
お世話になります。
バッジが役に立っております。
ところで
個人ですが登山をお供にするといくらの料金がかかるのでしょうか?
ご返答をお待ちしております。